個人事業主が会社を設立するタイミング
ちょうど2月の中頃から3月にかけて、個人事業主の方も確定申告について気になる頃だと思います。
私の事務所にも、確定申告のご依頼があったり、税務署や市役所、商工会議所にも連日多くの個人事業主の方が、確定申告の相談で長蛇の列を成しています。
独立して、自分のビジネスを始めたい。そう思った時悩むのは、会社を設立するか個人事業主として始めるかということだと思います。
個人的には、まず個人事業主としてビジネスをスタートさせてみて、事業の規模が一定規模になってきた場合に、会社を設立して法人化するのがよいと考えています。
なぜなら、個人事業主のメリットは、なんといっても手続きがカンタンなことです。個人事業の開業届け(と青色申告承認申請書)を出すだけで、個人事業主になることができます。また、法人の決算手続きと比べれば、個人の確定申告というのは比較的わかりやすくできていますので、苦手な会計や経理もご自身で苦しみながら何とか申告している方も多いと思います。
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税金面での法人と個人の比較
個人でビジネスをしている方が、一年間で得た利益に対しては所得税という税金がかかります。
この所得税というのは、累進課税といって所得が少ない時は税率が低いですが、所得が多くなると税率が段々と高くなる性質があります。
例えば、所得の金額が0円(赤字)~195万までであれば、利益に対して5%の所得税がとられます。
これが500万円を超えるようになってくると、20%の税率になります。
さらに、1000万円を超えるようになってくると、33%の税率になります。
所得税とは別に、個人には住民税もかかります。住民税率は一様に10%ですので例えば個人事業の規模が1000万円を超えるようになってくると、利益に対して43%の税金(所33%+住10%)が課せられるようになります。
参考 所得に対する所得税率+住民税率(10%)
0万円 ~ 5%+10%
195万円 ~ 10%+10%
330万円 ~ 20%+10%
695万円 ~ 23%+10%
900万円 ~ 33%+10%
1,800万円 ~ 40%+10%
4,000万円 ~ 45%+10%
一方で、会社を設立した時には、利益に対して法人税という税金がかかります。
資本金が1億円以下の中小企業を設立する場合を前提とすると、法人税と住民税、事業税と呼ばれる法人を設立した際に課される法人実効税率は所得が400万円以下で21.4%、800万円までは23.2%、800万円を超えると34.3%になるそうです。
細かい数字はここではあまり意味がないのですが、要するに私の伝えたいことは、利益に対して課せられる税金を比べた時に最初は所得税の税率の方が有利ですが、ある利益額を超えてくると、法人税の税率の方が有利になってくるということです。
所得税には所得控除というものもあるのですが、おおむね利益が300万円を超えてきたくらいからは法人を設立した方が税率だけを比較した場合には有利になってくることがわかります。
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なぜこのようなことが起きるのかというと、国の政策として企業の国際的な競争力を高めるために、法人税率をどんどん下げているからです。数年前までは法人実効税率は42%くらいだと記憶しておりますが、近年どんどん実効税率が下がってきて、税理士である私も今の税率がどれくらいなのかフォローしていくのが大変になってきています。
法人税率が下がるとなぜ国際競争力が高まると考えられているのかというと、
①日本の企業が支払う税金が少なくなるので、その分の利益を設備投資や研究開発に回すことができる。
②海外の企業が日本に会社を設立しやすくなる(税金が高い国には、誰も会社を作りたがりません)。
日本の政策が正しいかという議論はおいておいて、法人税率が下がってくるということは国の税収がその分減ってきてしまいますので、代替財源を確保しなければなりません。
その代替財源として、消費税率の引き上げや所得税率の引き上げの動きにつながっているのです。
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要するに、今の日本は法人に対しては優しく、個人事業主や個人消費者に対しては厳しい税制に移り変わってきているので、私たちが日本国内でビジネスを行うことを検討するときにはこれを頭に入れて、会社を設立するタイミングを探っていく必要があります。
もちろん、法人を設立するのには設立コストがかかります。
株式会社の場合には25万円程度かかりますし、合同会社でも10万円程度かかります。
また、たとえ利益が出ていなくても、均等割という利益とは関係なく固定的に支払う税金も発生します(規模によりますが年間7万円)。
こういった費用を加味しても、近年では法人を設立した方が結果として税金が安くすむということもありますので、今一度このブログを読んでいただき、ご自身の事業を法人にするということを検討してみても良いかもしれません。
これから大規模にビジネスを行っていこうと考えた場合には、個人事業主より株式会社を設立していた方が、取引の相手方や金融機関などからも信用されますので、法人を設立するのにはこういったメリットもあります。
また、法人を設立して家族を役員にして給与を支払って所得を分散させたり、法人を設立すると税理士としても提案できる節税の幅も大きくなってきますので、一定規模に事業が大きくなってきた方は一度法人化を税理士に相談してみても良いかもしれません。