妻が確定申告したら扶養から外れてしまいました
本日は海老名市役所で、確定申告の無料相談会を実施してきました。
これは、給与や年金受給者などの小規模納税者の方を対象に、税理士が無料で地域の納税者の確定申告をお手伝いさせていただくものです。
私は本日で2回目のお手伝いとなりました。
本日も朝から130人以上の納税者の方々が会場に足を運んでくださり、私もたくさんのご質問に一生懸命答えさせていただきました。
今日いただいた質問の中で、「扶養配偶者控除」について質問がありました。
これは皆様にも知っておいていただくといいなと思いましたので記事として記録したいと思います。
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田中さんご夫婦(仮)は、旦那様がサラリーマンとして働いていて、奥様は旦那様の扶養に入っていました。
しかし今年度、奥様は個人年金の受取で雑所得が30万円あるため、支払いを受ける際に所得税が30,630円(源泉徴収税率10.21%)徴収されました。
たとえ奥様に所得があったとしても、奥様の年間の合計所得金額が38万円以下であれば、旦那様の扶養として配偶者控除が受けられます。ここで奥様の今年の収入は雑所得30万円だけでしたので、今まで通り旦那様の扶養となることができます。
こういった場合は、まず奥様が確定申告をして源泉徴収された所得税30,630円の還付を請求します。さらに旦那様は奥様を扶養者として配偶者控除を行なうことで、所得控除も行う事ができ税金的に最も得することができると考えられます。
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しかし、次のような場合はどうなるでしょうか?
田中さんの奥様は、日中パートをしていますが、年間の給料は103万円を超えると旦那の扶養から外れるという事を知っていて100万円程度になるように調整して働いています。
しかし昨年は、趣味で行っていた株の配当金が10万円ありました。
奥様は証券口座を開設するときに、特定口座【源泉徴収あり】という口座を選択していたため配当金が支払われるときに20,315円(所得税15.315%、住民税5%)が源泉されており課税関係が終了しています。
多くの方はこういった場合、配当金について申告せずに済ませていると思います。
しかし配当金は確定申告することもでき、その際には「総合課税」と「申告分離課税」のどちらかを選択します。ほとんどの方は、上場株式等の譲渡損失や繰越損失と通算できる「申告分離課税」を選択したほうが一般的に有利と考えています。
では、「総合課税」を選択した場合はどうなるのでしょうか?
税率は他の所得と合算の上、15%~55%の累進税率で計算されますが、 国内株式等の配当等を「総合課税」で申告した場合には配当控除(税額控除)の適用があります。
配当控除を加味した実質的な実効税率は、課税所得に応じて、7.2%~48.6%となります。これに対し、源泉徴収のみで済ませた場合の税率は20.315%です。比較してみますと、課税所得695万円以下の人は、実効税率が7.2 % ~17.2%となり、総合課税で申告したほうが税負担が少ないということがわかります。つまり、総合課税として申告することで源泉徴収税率20.315%と実効税率との差分が、申告により還付されることになります。
もちろん、「申告分離課税」を選択したほうがよい場合もありますし、源泉徴収で済ませた場合、配偶者控除や国民健康保険料などに影響を与えないというメリットもあります。
再び、田中様の奥様の話に戻りましょう。
田中様がこの情報を新聞で読み、配当金を総合課税して源泉されている税金を取り戻したいと思ったとします。
この場合、奥様の給与所得は35万円(収入100万円‐給与所得控除65万円)、配当所得(総合課税)は10万円となり、合計所得は45万円。
旦那様の扶養からは外れてしまいます。
つまりこういった時は、奥様が確定申告することによって還付を受けることができる税金と、奥様が扶養から外れることによる旦那様の税金の増加とを比較してどちらが得かということを考えなければいけないのです。
それまで旦那様は所得控除として配偶者控除を受けることができその分税金が安くなっていました。配偶者控除は所得税なら38万円、住民税なら33万円の控除を受けることができます。
旦那様の所得税率は5%とすると、ご主人の増税分は
所得税 38万円(控除)×5%(税率)=1.9万円
住民税 33万円(控除)×10%(税率。所得に関係なく)=3.3万円
計 5.2万円の増税となります。
こういったケースの場合は、奥様が確定申告して源泉徴収された所得税の還付を狙いに行くのでなく、何もしないで旦那様の扶養のままでいる方が世帯全体で見た時に納付する税金額が減るということです。
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最近は、税金に関する情報を誰でもインターネットなどで調べることができますし、確定申告の時期になるとよく「確定申告をして税金を取り戻そう」という記事が特集されます。
相談会でも、よく勉強されている方が医療費の領収書などをごっそりともって来られたりします。
医療費を申告して、戻ってくる税金を計算してあげますが2,000円です。などと伝えるとその程度しか返ってこないのかとがっかりして帰られる納税者の方もいらっしゃいます。
一般の納税者の方が税金の興味を持っていただきとてもうれしいですが、大事なことは一人で判断せず是非税金の専門家である税理士に相談してください。