受験時代の思い出 ~ヒルズ族と呼ばれた男~
テレビでも活躍中の堀江貴文さん(通称:ホリエモン)ですが、2000年代初頭に彼ほど世間をにぎわせた人はいないでしょう。
皆さん、ホリエモンというと何を思い浮かべますか?
多分、年齢によって思い浮かべるものが違うでしょう。
20歳以下の学生にとってホリエモンは、「サンデー・ジャポン」のコメンテーターやクイズ番組で解答している東大出身のインテリ芸能人と思われるかもしれませんね。
私にとってホリエモンは大学生時代の憧れでした。
ITバブル、六本木ヒルズ(ヒルズ族)、プロ野球球団買収、ニッポン放送買収、衆議院選立候補
いまでも、この言葉を聞くとホリエモンを連想する人が多いと思います。
そうです、ホリエモンはかつて世間を騒然とさせるほどの事件をいくつも起こした「しくじり社長」なのです。
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たとえば芸能人3大逮捕 (2000年代初頭)
3位 酒井法子(のりピー) 2009年 覚せい剤所持法違反
2位 清原和弘 2016年 覚せい剤取締法違反
1位 堀江貴文(ホリエモン) 2006年 証券取引法違反
これは私が独断と偏見で決定させていただいた2000年代初頭の芸能人の3大逮捕です。
ホリエモンが逮捕されたときは、あれだけ世間を騒がせていた人物の逮捕にビックリするとともに誰もが思ったことがあります。
「ホリエモンは目立ちすぎたから闇社会に消されたんじゃないか」と。
現にホリエモン事件では、未だに原因不明の関係者の怪死事件も起こっています(野口英昭氏自殺事件)。
そもそも、ホリエモンって逮捕されてたって事を知らない人もいるかもしれません。また、なんで逮捕されたんだっけ?って忘れてしまった人のために、通称ライブドア事件をおさらいしたいと思います。
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ライブドア事件の真相
有価証券報告書虚偽記載容疑
堀江貴文氏が代表取締役を務めていたライブドアに関して起訴された事件はいくつかありますが、その中で金額的に最も大きいものは、有価証券報告書に虚偽の内容を掲載したとする罪です。
これはライブドアが、2004年9月期の連結決算において、実態は3億円の経常赤字であったにもかかわらず、架空の売上を計上するとともに、ライブドアが出資する投資事業組合がライブドア株式を売却する事で得た利益を投資利益として売上に計上、53億円の利益を計上することによって50億円の経常黒字であったとする、虚偽の有価証券報告書を提出したとするものです。
このように粉飾で、会社の企業価値を実態よりも過大に見せかけ、株価を不正につり上げて、会社の時価総額を短期間で急激に拡大させたとする罪でした。
この文章を読んで、ほうほうなるほどってわかる人がいたらかなり会計のセンスがあると思います。
なぜならこれは現役公認会計士の私でもうなってしまうような事件だったからです。
そもそも、ライブドア株式を売却する事で得た利益を投資利益として売上に計上の部分を読んで、なんでこれが犯罪になるのかって話です。
だって普通、会社が保有している株式を高く売却しそれによって利益を得た場合は売上になるに決まっているじゃないですか。
実は自社株を売却して利益が出た場合には、その利益は売上に計上してはいけないことになっているのです。
今回は、実質的に支配している投資事業組合を通じてライブドア株式を売却したということは、実質的に自分の会社の株を売却したのと同じことなので、株式売却益を売上に計上したライブドアは違法!=代表のホリエモンは逮捕! となったのです。
なんで、自社株式を売却した時に利益を売上に計上してはいけないかわかりますか?
実は、これは公認会計士や税理士になる際に勉強する財務諸表論では必ず出てくる典型論点なのですが、今でも考え方が二分するような難しい話なのです(実際、2006年の公認会計士試験には、ライブドア事件をテーマに一問出題されました)。
簡単にご説明すると、自分の会社の株式(自己株式)は、資産としての一面もあるし、もともとは株主から払い込まれた資本としての一面もあるよねってことです。
つまり
①自社株を資産として考えるならば、売却益は売上に計上してよいという考え(損益取引)
②自社株を株主からの資本金と考えるのであれば、売却益は資本剰余金として考える(資本取引)
説明を聞いてもよくわからない人が多いと思います。
そうなんです。このホリエモンが起訴された事件は、そもそも難しすぎてホリエモンが関与していたとは思えないのです。
ホリエモンもかなり頭がよいと思いますが、この自社株式のルールを把握していたとは思えません。
当時、ホリエモン自身取引について「違法性の認識がなかった」と答えていますが、個人的には、本当に違法だったことを知らないで「自社株を売却すれば売り上げ増えるじゃん。会計の裏ワザ発見!」程度のノリで売却を行ったのかな?と思っています。
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実は逮捕されるほどでもなかった?ホリエモンの粉飾決算
結論から言えば、ライブドア事件は国策捜査だったわけで、結論(堀江逮捕)ありきだったと考えるのが自然です。
なぜなら、他の粉飾事件と比べてライブドア事件は金額的にも違法性も大したことがなかったにも関わらず、経営陣の逮捕や上場廃止にまでなったからです。
例えば2015年に粉飾が発覚した東芝は過去5年間で2248億円もの利益を水増し計上して有価証券報告書を提出していました。
一方ライブドアはたった53億円です。
しかも、東芝の利益水増しは組織ぐるみで行われており、その事実を知っていた歴代経営陣も逮捕されておりません。会社の上場も維持されました。
一方、ライブドアは「違法性を認識していなかった」代表のホリエモンも含め経営陣は逮捕されました。またライブドア社の上場も廃止されました。
この時期同じように、世の中を騒がせた村上ファンドの村上世彰氏も逮捕されています。
まさに、ライブドア事件は、ITバブルや規制緩和によるM&Aの乱発で、法制度が追い付かず、進みすぎた自由主義の行き過ぎに警告をするための国策捜査だったと言われています。
この時期同じようにIT社長としてメディアで騒がれながらも、ホリエモンとは違い社会に礼儀を尽くし大人な対応を見せたのが、楽天の三木谷社長やソフトバンクの孫社長でした。
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そして今、テレビを見ていて、かつてのホリエモンと共通する人物がいます。
それは、ドナルド・トランプ氏です。
彼は、もともとアメリカで有名な実業家で、現在オバマ氏の次のアメリカ合衆国大統領候補です。
ハワイやニューヨークの「トランプ・タワー」も彼のもので、通称「アメリカの不動産王」。
カネや知名度にモノを言わせて、大統領選挙候補者指名争いをする彼を見ていると、かつてのホリエモンを思い出します。
ホリエモンもかつてこう言っていました。
「政治家になりたいんじゃない。総理大臣になりたいんだ」
実業界で金も名誉も手にすると、最後にはプレジデント(総理大臣、大統領)を目指すのでしょうか。
トランプ氏は現在大統領候補選の中では、圧倒的人気を誇っていますが、アメリアの裏社会のボスを怒らせたりしていないのでしょうか。
きちんと裏社会のボスに礼儀を尽くしているのであれば、彼は大統領になれると思います。しかし彼らに礼儀を尽くさず傍若無人に選挙戦を行っているとするのであれば、トランプ氏はいつか闇社会に消されてしまうのではないでしょうか。
現在の大統領選を見ているとたまにそんなことを思い出してしまうのです。