やまと総合会計事務所

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2016.2.16.

税務当局の国外財産に対する監視強化

今回は、国際税務に関する制度について少しお話ししたいと思います。

最近、国外財産に対して税務当局が監視を強めています。

また「資産フライト」とよばれる富裕層が海外に移住することに対する規制とも思えるような法律が制定されています。

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日本で「出国税」が導入。海外へ資産移転時の課税強化が始まる。

株式などを売却した際に、現在の日本では利益の20%が所得税として課税されます。

しかし海外には株式売却益への税率がもっと低かったり、無税の国もあります。

この場合、海外に移住してから株式を売却すれば現地の税率が適用されます。

例えば香港はキャピタルゲイン税がないので、香港に移住してから、日本で購入した株式を売却すれば税金がかかりませんでした。

この税制を利用して、富裕層の中には、いわゆる資産フライトと呼ばれる、節税対策を目的に海外移住をしている人たちがいました。

しかし、「国外転出時課税制度」が平成27年7月から開始されました。別名、出国税とも呼ばれ、1億円を超える有価証券を持つ資産家が海外に移住する際、売却前でも株式の含み益などに所得税(15%)を課す制度です。

これは、タックスヘイブンと呼ばれる租税回避地(税率の安い国)を使った課税逃れへの対策で、富裕層が行ってきた節税対策に対して課税が強化されたのです。

例えば、1億円の含み益があるA株を海外転居時に保有している場合、含み益に対して15%が課税され1,500万円の納税義務が課されるようになりました。

また「出国税」は海外移住だけでなく、1年以上の海外転勤や留学も対象となりますので注意してください。

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5,000万円以上の海外資産を持つ方が対象の「国外財産調書制度」

国税庁の実地調査によると、国外財産の所得税や相続税の申告漏れは日本国内財産の約2倍という統計もあります。これは、税務当局が国外の財産について今まで把握できていなかったからです。

そのため、現在、税務当局は国外に財産を保有している国内の資産家へ課税を強化しており、日本から海外への送金についても本格的に把握に努めています。

このため平成25年からは「国外財産調書制度」が日本で施行されました。

これは居住者でその年の12月31日において、合計で5,000万円を超える国外財産を有する場合には、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければいけないという制度です

国外財産とは「国外にある財産」とされており、国外にあるかどうかの判定については、財産の種類ごとに行なうことになります。例えば、「不動産又は動産」は、その不動産又は動産の所在地、「預金、貯金又積金」はその預金、貯金又は積金の受け入れをした営業所又は事業所の所在地により判定する、といった具合です。

例えば、HSBC(香港上海銀行)の東京支店で口座開設し、預金をしたり、投資信託を購入している場合は国外資産対象外となりますが、海外のHSBCの本支店で口座を開設し預金等を行った場合は「国外にある財産」として報告義務明細に記入しなければなりません。

国外財産の価額については、5,000万円超が対象となりますが、その価額は12月31日時点での時価又は時価に準ずるものとしての見積価額となります。

国外財産調書を期限内に提出していない場合や、提出した国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(記載が不十分と認められる場合を含む)に、その国外財産に関して所得税の申告漏れ(死亡した者に係るものを除く)が生じたときは、過少申告加算税が5%加重されます。また、故意に偽りの記載をした場合や、期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が処されることとなりました。

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従来の「財産及び債務の明細書」がリニューアル

平成27年度の税制改正で、従来の明細書を改め、新「財産債務調書」が整備されました。

これにより平成28年1月以後に提出される確定申告書より「財産債務調書」を提出することが義務付けられました。

今回の改正で、

① 「所得が2,000万円超」
かつ、
② 「その年の12月31日時点で有する(1)財産の価額の合計額が3億円以上、又は(2)出国税の対象資産である有価証券等の価額の合計額が1億円以上の者」
と、要件が追加されました。

以前からも、その年分の所得の合計額が2,000万円をこえる人は、「財産及び債務の明細書」という書類を確定申告の際に提出しなければならないとされていましたが、提出しない場合の罰則については規定されていませんでした。これが今回の改正で罰則規定が明文化されました。

(国税庁パンフレットより)

(1)財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、過少申告加算税等が5%軽減されます。

(2)財産債務調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産又は債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されます。

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「財産債務の明細書」「国外財産調書制度」は、ともに相続税の申告漏れ防止が目的です。

アメリカでも海外の金融機関に1万ドル以上の資産を有する人は、IRS(内国歳入庁)への報告が義務付けられています。

2009年2月、スイスのプライベートバンク大手UBSが富裕な米国人顧客の脱税を幇助していたとして、総額7億8000万ドルの罰金を支払うとともに、285人の顧客名簿を米司法当局へ提出しました。今までは、スイスの銀行は完全な守秘義務で成り立っており、顧客情報は漏らさないという事で資金を集めてきましたが、それが壊れたわけです。

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現在、日本は世界のほとんどの主要国と租税条約を締結し、脱税防止の為に情報交換の手続を定めています。

しかし現実的には日本の税務当局は、自由に海外の金融機関の口座情報を入手できません。

なぜなら、租税条約に基づく情報提供に際しては、調査対象となる個人・法人を特定するだけでなく、情報提供に正当な理由があること、その情報が国内調査では入手困難であることを説明する必要があるからです。現実的には大口の脱税案件に限り情報提供を受けていたものと思われます。

日本国内の金融機関に対しては、税務当局は質問検査権を用いて顧客情報を提供させることができますが、海外の金融機関は日本の法令に従う義務がないので、たとえ租税条約を締結していてもきわめて限定した情報しか入手できないわけです。

この不備を補うために今回相次いでが「国外財産調書」や「財産債務調書」が制定されたと思われます。

私は、もともと国際税務も専門にして仕事をしておりましたので、たまにこういった世界をまたにかけた情報も提供していきたいと思っております。

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