やまと総合会計事務所

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2016.9.8.

私の履歴書 第1回 ~岩瀬大輔さんとの出会い~

ギリシアの漁師と投資銀行家

ギリシアのある小さな島に、1人の漁師がいた。

男はまだ暗いうちから起き出して、波打ち際を歩くのが好きだった。

波しぶきの音を聞きながら、少しずつ明るくなる水平線を見渡すと、どこか自分という個の存在を超えた、自分が生まれるずっと前の雄大な歴史を感じることができるような気がするのだった。

男は毎朝、海に出て、仕事をした。子供の頃から海に出ていたから、船の上が自分の本当の家であるかのように感じていた。網を持って魚たちと真剣勝負で向かい合うのが、何よりも好きだった。大漁の日もばっとしない日も、海はいつも、彼に多くのことを教えてくれた。

漁から戻るのは、いつも昼過ぎだった。彼は浜辺で仲間たちとその日の収穫を焼いて食し、残りの魚を小さな市場でわずかなお金と引き換えに売り、そのままフルーツや野菜、必要なものを買って、丘の上の小さな家に帰るのだった。

家に帰ると、家族が彼を待っていた。やんちゃな子供たちと外に出て遊び、食卓を囲んで彼らの1日の冒険話に耳を傾け、寝静まったあとで、テラスに出て妻と酒を飲むのが日課だった。

ある日の午後、彼のもとを1人の若い男が訪れた。

この島には不釣合いのダークスーツを着たこの男は、アメリカのハーバード・ビジネススクールという学校を卒業したのち、名門投資銀行に勤めているとのことだった。

「漁師さん、あなたの腕の素晴らしさについては遠くウォール街でも名が轟いています。つきましては、ぜひともあなたと事業をともにしたいと思い、はるばるやって参りました。ひとつ、私の話を聞いていただけませんでしょうか?」

男はそう言いながら、40ページはあるプレゼンテーション資料を取り出して机の上に置いた。

「我々の調査によると、あなたが取る魚の鮮度は素晴らしく、この小さな島で売っているだけでは、もったいない!私たちの国際的なネットワークを活かして、この島、そしてギリシアの国境を越えて、広く世界にあなたが取った魚を販売しようではありませんか!」

「そのためには、まず生産性を上げなくてはなりません。あなたのような漁業従事者の生産性について、国際的なベンチマ-クを調査したのがこのグラフです。すでに平均以上の高さにあるのですが、より多くの人を雇い、新たな漁船を買い入れることで、規模の経済を活かし、今よりもさらに数倍、生産性を高めることが可能になります!

もちろん、資金は当行でご用意させていただきます」

「拡大した業務の円滑な運営のためには、基幹システムへの投資も必要となりますね。他のプロジェクトでも一緒に仕事をした、優れたlTコンサルタントを知っていますので、ご紹介します。また、あなたが家にいても常に漁の具合や日勺の売上げ、利益動向が分かるように、モバイルのシステムも必要ですね」

「この戦略が軌道に乗ったら、競合他社を買収しましょう!隣り島に、ちょうど同規模の業者がいます。彼らを取り込むことによって、間接部門を合理化し、新たな顧客も獲得し、もって収益率を高めていくことが可能です。もちろん、交渉から取引のクロージングまで、我々が一切サポートいたします」

「これで売上げを大幅に伸ばし、成長していくことができたら、株式公開を目指しましょう!資金調達の円滑さを求めるならば、地元ギリシアの株式市場などではなく、米国ナスダックで!わが国では、大きな成長のポテンシャルを持っている企業へ投資したい投資家が山ほどいます。これによって、あなたは想像したこともないほどの富を手にするでしょう!」

ここまで一方的に話をされたのち、漁師は一言言った。

「それで、そのあとに、私はどうすればいいのですか?」

「え?」

それまで雄弁だった男は、そこで止まってしまった。まるで、その問いに対する答えは準備していなかったがのように。

「えっと……。そうですね、それで富を手にしたのちは、引退されて大きな家でも買われたらいかがですか?毎朝ジョギングでもして。ここでしたら波打ち際が気持ちよさそうですよね。それからご趣味に好きなだけ時間を使われて、優雅なブランチでもお仲間とご一緒にされて、ご家庭で好きなだけお子さんたちと遊んで、夜はほら、奥様を素敵なディナーにでも連れて行く。そんな、夢のような毎日を送ることができるのですよ!もう、毎日仕事に追われる必要はなくなるのです」

「それだったら、今の私の生活と何も変わらないのですが……。途中、がむしゃらに働いたのは、何の意味があったのですか?」

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これは、現在はライフネット生命の代表をされている岩瀬大輔さんが、ハーバード・ビジネススクールに通っていた時の体験記を記した、「ハーバードMBA留学記」という本の中で紹介されていた、ハーバード・ビジネススクールに入学した学生が一番最初に授業で習うテーマだそうです。

公認会計士試験に合格したばかりの若手のころ、この本を読んで、話に感銘を受けた私は、早速そのころライフネット生命を立ち上げたばかりの岩瀬さんとお会いする約束をいただき会いに行きました。

岩瀬さんはどことなく杉村太蔵さんに似ているのですが、とても気さくな方で、私のような人間にもいろいろとお話ししていただいたことを覚えています。

ライフネット生命は、2006年に設立したばかりの生命保険会社で、保険外交員をなくした直販のネット生保を目玉とした商品を展開していきました。

まさしくこれは今でいうフィンテック(金融とインターネットの融合)の走りだったわけですね。当時はフィンテックという言葉はありませんでしたが、当時から金融の世界もインターネットを使ってもっともっと便利になるのではないかと感じておりました。

参照ブログ:フィンテックってなんのこと?

この時、私のようにフィンテックの可能性を感じて会社を設立した人たちが、今ではフィンテックの申し子として日本のみならず世界で羽ばたいているわけです。

以前から、一生懸命働いた先に何があるのか、ということを私も考えながら仕事をしてきましたが、日々の仕事に忙殺されていくうちに、本当に自分にとっての幸せは何なのか忘れてしまうことがあります。

キャリアで成功しようとがむしゃらに突き進んでいった先に、何が待っているのか?

休日も平日の夜遅くも会社で一生懸命働いてらっしゃる方もいると思いますが、たまにそんなことを考えてみても良いのではないでしょうか?

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